歯並びを予防する、という考え方。
子供が虫歯になってから歯医者に行く、という人がかなり少なくなったと感じます。普段から健診やクリーニングを受ける事で歯医者に行くことを習慣づけ、虫歯になる前に予防しよう。虫歯になったとしても、神経の治療や抜歯になる前に早く見つけて素早く治そう。そういった意識が歯科の側だけでなく、保護者の方から強く感じられるようになりました。ほんの10年くらい前では考えられなかった事です。
ところで歯並びについても同じことが言えるって、ご存知でしたか?歯並びの乱れの原因は大きく分けて骨格的な問題と、機能的な、歯と口周りの筋肉の問題に分かれます。また骨格的な問題を抱える人は、多かれ少なかれ歯と口周りの筋肉の問題を必ず抱えています。大人で「歯を並べたのに時間とともに動いてしまった!」という人をよく見てみると、機能的な問題が見逃されてることがよくあります。歯は舌と口の周りの筋肉のちょうどつりあった場所に並ぶようにできており、異常な筋肉の動きが、せっかく並べた歯をあらぬ方向へと動かしてしまうのです。
お口ぽかん、という言葉を聞いたことはないでしょうか。背筋が曲がっていて、いつも鼻がつまっており、しっかりと口が閉じられない、閉じても何だか唇に緊張感がある。お子さんやその周りにいらっしゃるのではないでしょうか。これは口唇閉鎖不全症と呼ばれる立派な病気で、歯並びの他にも鼻呼吸できない事によるアレルギーや、口の中が乾燥する事で虫歯、歯肉炎(成人後は歯周病)との関連を指摘されています。新潟大学の調査によれば有病率はおよそ30%。1クラス30人としたら9人はかかっている計算になります。機能的な、口の周りの筋肉に問題を抱えている子は、それだけ多くいるのです。
私たちは今のお子さんと保護者の方がいかに多忙であるか理解しています。トレーニングが出来なかったからといって、歯がきれいに磨けてなかったからと言って、叱ったり怒ったりする事は決してありません。一人一人の子供たちに、どうやったら健康で綺麗な口元をプレゼントできるのか、一緒に考えていきましょう。
小児歯科外来担当医 高田礼央
投稿日:2023-02-16 カテゴリー:コラム, 小児歯科コラム